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サイト閉鎖のお知らせ

諸般の事情により、2021年5月末日をもちまして「チャンスクリエーター」を閉鎖させていただきます。
これまでのご愛顧に対しまして、スタッフ一同、深く感謝するとともに心より御礼申しあげます。

長らくのご愛顧誠にありがとうございました。

当たり前の幸せがある空間を作りたい。―NPO法人 チャイルド・ケモ・ハウス/アートディレクター 於保可那子さん

当たり前の幸せがある空間を作りたい。―NPO法人 チャイルド・ケモ・ハウス/アートディレクター 於保可那子さん
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小児がんで治療中の子どもたちとその家族が、自宅のような環境で専門治療を受けられる施設が神戸にある。「チャイルド・ケモ・ハウス」。日本初の小児がん専門治療施設だ。建物内はシンプルでおしゃれ。病院とはかけ離れたデザイン性を持つが、治療を行う施設でもあるため、十分な機能性も持ち合わせている。そんな印象だ。

そこでアートディレクターを務める於保可那子さん。病院や治療施設にデザイナーという職種は違和感があるかもしれない。しかし、家のように「あたりまえ」が詰まった環境を目指す同団体には、於保さんの力が欠かせなかった。

今回は、チャイルド・ケモ・ハウスのアートディレクター、於保可那子さんと事務局長の田村亜紀子さんにお話を伺った。

 

NPO法人 チャイルド・ケモ・ハウス/アートディレクター 於保可那子さん

NPO法人 チャイルド・ケモ・ハウス/アートディレクター 於保可那子さん

 

「病気だから我慢」は当たり前じゃない。

 

―まず、チャイルド・ケモ・ハウスについて事務局長の田村さんに伺いたいと思います。普通の病院と大きく異なるのはどんなところでしょうか?

 

田村さん(以下、敬称略):柱となるコンセプトは「家のように暮らせること」。家のような落ち着いた環境で治療に臨んでほしい、家族が一緒にいられるように、という想いからスタートしました。病気の治療中だからといって、我慢することが生活の中にあってはいけないという考えが根底にあります。たとえば、普通の病院では面会時間が決められていますよね。面会できる人も、時には両親に限られたり、時間や相手に制限があることがほとんどです。でも、ここでは部屋の外に扉をつけていて、いつでも人に会えるようになっています。家であれば当たり前にできることを、ここでもできるように。これが病院とは大きく異なる点です。

建物自体のデザインも、建築家の方が、前向きに治療に専念できるようにと光を多く取り込んだ設計にしてくれました。プレイルームを作ってもらったり、私たちのアイディアに、於保さんはじめ職人の皆さんが様々な要素をプラスしてここが出来上がりました。

 

デザインの力が、医療現場を変えていける。

―於保さんは具体的にどのような活動をされているのでしょうか?

於保さん(以下、敬称略):チャイルド・ケモ・ハウスでの私の役割は大きく分けて3つあると思っています。一つ目は、「らしくない病院」「怖くない病院」づくり。二つ目は、医療現場に「あったらいいな」と思えるグッズなどをデザインすること。病院は「●●しなければならない(Must)」の連続ですが、デザインの力で「●●したい(Want)」に変えていきたいと考えています。最後は、チャイルド・ケモ・ハウスの色(=特色)を守る立場であること。アーティストやクリエイターと関わっていく中で、この役割は強く認識しています。

私は、元々はファッションデザインの仕事をしていたのですが、講師をしていた専門学校に「がんの治療に関するファッションショーをしてほしい」という依頼が来たことがきっかけで、チャイルド・ケモ・ハウスと関わりを持つようになりました。それまで意識したことのなかった医療現場に、「デザイン」が必要とされている手応えを感じたことも事実です。ファッションの世界に制約はありませんが、制約がないからこそ、時に新しいことをしにくい環境でもあります。一方、医療現場は制約だらけの世界。でも、だからこそちょっとしたアイディアが、現状を格段に変えていく。医療とデザインが結びつくことでできることがもっと広がっていくという確かな可能性を見出したのです。

 

―於保さんが手がけたグッズにはどういったものがあるのでしょうか?

於保:治療中、病院スタッフは感染面の問題で一日中マスクをつけているため、顔が見えずに怖い、という声からできた「アニマルマスク」があります。マスク自体に動物の鼻が付いています。これは、ファッションショーの際に学生と一緒に作りだしました。つけていてもコミュニケーションが取れ、笑顔になれるマスクです。患者さんや医療現場から「こういうことに困っている」「こういうものが欲しい」という声があってこそのものですが、日常生活を送る私たちも欲しくなるようなもの、という観点は大切にしています。その他にも、髪の毛が抜けてきてしまった子の帽子や、カテーテルを付けていても邪魔にならない鞄など、声をすぐに形にすることも大切にしています。

グッズ以外では、「目に見えないもののデザイン」ということも活動の一つです。たとえば、「食べることをデザインする」というテーマで「カレー旅行という企画を実施したことがあります。病気だと旅行に行くことは難しくなります。そこで、全国のレトルトカレーを集めて食事を通じて旅行気分を味わってもありました。こういったアイディアはスタッフとのおしゃべりから生まれることも多いのです。

デザイナーという専門職を病院内に置くことは難しいかもしれませんが、それぞれの病院にも専属デザイナーがいたら、より良い病院になっていくのではないかとも考えています。

 

―これまで於保さんが手がけたデザインの中で、印象に残っているエピソードを教えて下さい。

於保:サッカーに熱中している男の子がいたのですが、ある日、何気なく大きな段ボール箱でサッカーゴールを作って置いておいたんですね。すると、翌日その子がそれを使って遊んでいたのです。自分が作ったもので遊んでくれているんだな、くらいにしか感じていなかったのですが、それを見た医師や看護師、家族から、その子の「足が太くなった」「その子の自然な動きを知ることができた」という声を聞いたのです。ただ遊べるおもちゃを作ったつもりだったのが、思わぬ作用を生み出していていたこと、また職種によって見る観点が異なることを再認識しました。

デザインしていることや物づくりをしていることを前面に出すのではなく、自然とそこにいる存在でありたいと思っています。病院は色んな人にお世話になる場所ですが、それが逆に心苦しさにつながってほしくない。だから、「入院生活もいい時間だったな」と思ってもらえるような、子どもたちにとって居心地の良い場所を自然に作っていきたいと考えています。

 

―チャイルド・ケモ・ハウスにとって、於保さんはどんな存在ですか?

田村:チャイルド・ケモ・ハウスの良さをさらに引き出してくれる存在です。それぞれの子どもの趣味に合わせることを大事にしてくれています。たとえば新しい子が入居してくるタイミングでランプシェイドを変えたり。このハウスの良さを保ちながら、ハウス全体として、その子を「Welcome!」な雰囲気で迎えてあげることを大事にしてくれています。また、社会の一職業である「デザイナー」として子どもたちに関わってくれる一面もあります。子どもたちにとっては新鮮で、ワクワクを与えてくれる。そんな影響力のある人ですね。

 

一つでも多くの場所が増えてほしい。

 

―今後、取り組んでいきたいこと、チャイルド・ケモ・ハウスから発信していきたいことはどんなことですか?

於保:このような場所は現在、日本で一つしかありません。ここで上手くいったことは、他の病院でも取り組める可能性は十分にあると思っています。ですから、基本フォーマットは作りつつも、それぞれの場所のルールでそれぞれの色に染めたコンセプトを増やしていく。そんな風にここの活動が始まりとなって、広がりを持っていければいいと考えています。

また、e-ラーニングを通じて他病院との関わりを持ちながら、院内学級でデザインの授業をするという活動も始めています。病気になると希望の進路を諦めたり、将来が見えなくなってしまうという話をよく聞きますが、様々な職業を紹介することで、進みたい道・なりたい職業を見つけるきっかけにしてほしいと考えています。入院することが、学校に戻る際の弊害になっているのであれば、院内学級を通じて「マイナスな入院」を「プラスな入院」に変えていけるサポートができるのではないかと考えています。

 

 

【プロフィール】

於保可那子(おほ・かなこ)

NPO法人 チャイルド・ケモ・ハウス/アートディレクター、メディカルデザインラボ担当

1983年奈良県生まれ。専門校でファッションを学ぶ。卒業後デザイナー・スタイリストとしてフリーランスで活動。分野を問わず、様々な企画・デザインに携わる。2008年より卒業校にて講師をはじめ、人を育てること、学びのデザインに興味を持つ。2010年にプロデュースしたショーをきっかけにチャイルド・ケモ・ハウスに出会い、2012年アートディレクターに就任。

 

 

  • 「チャイケモチャリティーウォーク」

    【日時】2015年6月6日(土) 10:00スタート
    【集合場所(受付)】KIITO(デザインクリエイティブセンター神戸)
    http://kiito.jp/access/
    【スタート】東遊園地 南側噴水広場
    【参加費】 大人2000円、子ども(中学生以下)1000円
    ※ご参加いただいた方全員に当日ご着用いただくオリジナルチャリティTシャツをお渡しします。
    ※申込制
    【申込締切日】 5月29日(金)
    【コース】 約5km 東遊園地→センター街→南京町→メリケンパーク→KIITO(ゴールで楽しい催しがあります!)
    【ゲスト】
    奥野史子さん(スポーツコメンテーター。バルセロナ五輪シンクロ銅メダリスト)
    高井美紀さん(MBS毎日放送アナウンサー)詳細、申し込み方法は、
    http://www.kemohouse.jp/11_oshirase12.html
    をご覧ください!【お問い合わせ】
    公益財団法人チャイルド・ケモ・サポート基金
    〒650-0046
    神戸市中央区港島中町8-5-3
    TEL:078-303-5315
    FAX:078-303-5325
    MAIL:walk@kemohouse.jp

●記事の内容は取材当時の内容であり、現状は異なる可能性がございますので予めご了承ください。

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