Toggle

ボランティア

サイト閉鎖のお知らせ

諸般の事情により、2021年5月末日をもちまして「チャンスクリエーター」を閉鎖させていただきます。
これまでのご愛顧に対しまして、スタッフ一同、深く感謝するとともに心より御礼申しあげます。

長らくのご愛顧誠にありがとうございました。

地域に安心を。新しい看護師の働き方ー全国訪問ボランティアナースの会 キャンナス代表 菅原由美さん

地域に安心を。新しい看護師の働き方ー全国訪問ボランティアナースの会 キャンナス代表 菅原由美さん
Pocket

全国訪問ボランティアナースの会 キャンナスの代表を務める菅原由美さん。自身の育児、身内の介護体験から、有償ボランティアの訪問看護を立ち上げた看護師だ。度重なる制度改正や行政との対立、そして2011年の東日本大震災での被災地支援。多くの壁を乗り越えた菅原さんは、地域の課題を解決する方法は、「生活の視点で人を見る看護」だと力強く話してくれた。

 

全国訪問ボランティアナースの会キャンナス 代表 菅原由美さん

全国訪問ボランティアナースの会キャンナス 代表 菅原由美さん

【自宅で最期を迎えるということ】

―ご家族を在宅で看護されていた経験があるとのことですが、その経験がボランティアの訪問看護の立ち上げに大きな影響を与えたのでしょうか?

学生時代から、「死ぬまで病院にいることはどういうことか?」という疑問はずっと抱えていました。義母が癌になり、主治医は私が看護師だと知っていたので「連れて帰っていいよ」と言ってくれ、在宅で看護をすることになりました。それが私にとって大きな転機であることは事実です。ただ、それ以前にも祖母を自宅で看取ったこともありましたし、自宅で最期を迎えることが一番良いということはずっと考えていたことです。

 

【在宅看護はチーム医療】

―実際に在宅看護を立ち上げるには、いくつもハードルがあったのではないでしょうか?

看護師は医師の指示のもと医療行為を行うことが義務付けられています。私たちキャンナスは、医療行為は行いません。あくまでも、「ご家族が日常的に行っていることを代わりにお手伝いするレスパイトケア」というスタンスを取っています。掃除、洗濯、食事の用意。薬の注入や吸引も日常的にご家族がやられているのであれば行います。私たちは医療者としてではなく家族の手替わりとしての立場ですので、医師ではなくご家族の指示に従います。本来、看護とは生活の中にあるもの。もちろん、活動内容には法的になんら問題はありません。

在宅看護は看護師がすべて一人で行うものというイメージから不安を持つ看護師がたくさんいますが、主治医、ヘルパー、ケアマネも連携したチームで行うものです。今の時代、携帯電話でいつでも連絡を取ることができますし、連絡ノートでご家族ともつながっています。また、ハイテク医療というと高度医療を連想され「ハイテクだから難しい」と思われる方が多いようですが、これは違います。機械がハイテクになり、人間が行うことは簡単になっているということです。

一人の看護師がこの世界に飛び込めば、一人の困っている人が助かります。何千人もの看護師が躊躇していることを、とてももったいないと感じています。

 

【一人からの開業は、看護師の新しいワークスタイル】

―菅原さんは看護師の「一人からの開業」を推進していらっしゃいますが、看護師が一人から開業できるようになることで、どんな社会的な効果があらわれると思いますか?

看護師の一人からの開業は、結婚して、出産して、育児をしながらでも在宅で仕事ができる新しい看護師の働き方だと思っていますが、現状では認められていません。

女性も働き続けることが当たり前な、新しい時代が来ているのですから、これをきちんと推進できる仕組みを作らなければならないと思っています。1人で受け持てるのは20人程度が限界ですが、子供が幼稚園に行っている間に1日2件訪問しても2時間くらい。夜、子供が寝た後に書類書きして、1ヶ月に50万円ほどの対価が得られます。もちろん、24時間・365日、コールは受けます。ただし、受け持ちの方が皆、手術を終えたばかりの人たちや癌末期の方ではありません。1か月のコールは数回、それも大抵が看取りのコールです。昼間のケアをしておけば夜のコールは鳴らないというのは、国際的にも明確に示されています。

小学校区に1人、地域密着でこのような活動をする看護師がいることで、地域の困っている人たちを助けられ、家に帰って来られる人を増やす仕組みが整備されます。看護師の一人からの開業による効果は非常に大きいものになります。

 

【マニュアルに縛られ過ぎない、自立した看護師】

―実際に一人から開業するには、すべて一人で責任を負う必要がありますよね。どんな看護師が求められますか?

私は、看護師にはもっと自立してほしいと思っています。自立した看護師とは「自己決定・自己責任・自己判断」できること。これに尽きます。これは日常生活の中では皆さんやっていることなのです。たとえば、買い物に行って新しいバッグを買う。そのバッグは自分で「自己決定」したものです。「他の色が欲しかったのに」と言っても、その選択に誰も責任は持ってくれません。それを買うのは自分が「自己判断」したからです。でも残念ながら、多くの看護師は最終的な責任は医師が取ってくれると思っています。これが看護師という職業のもっとも未熟な点です。

これは歴史的に医師が看護師に対して物を言わせなかった、医師を守る法律は多くあったという事実も影響していますが、今はそんな時代ではありません。看護師も意見を言わなくてはなりませんし、医師も意見を求めてきます。そのために看護学校で医療を勉強するのです。キャンナスでは看護師たちに「医師にきちんと意見するように」と言っています。「看護師と組めば在宅で看取りもできるんだ」と、思ってくれる医師が増えること。そのためにはまず、看護師が自立する必要があります。

 

―東日本大震災の際には多くの看護師を派遣されたとのことですが、それだけの数の看護師を束ねるのは大変だったのでじゃないでしょうか?それこそ、看護師の自立性が求められる現場なのではないかと予想されますが、いかがでしたか?

東日本大震災の際は看護師だけでなく、セラピスト、介護職など2万人以上の医療従事者を派遣しました。「看護師 ボランティア」でインターネット検索をするとキャンナスがヒットするのです。日本赤十字なども募集していましたが、問い合わせが多すぎて参加させてもらえなかったようです。また、看護協会などは、きちんと現地に行ってからの看護師たちの生活も担保できる準備をしてから、災害看護学を学んだ人たちを派遣していました。しかし、キャンナスはボランティア団体なので、準備をするお金もありません。「みんな手弁当で赴く」ということが参加の条件でした。「自己決定・自己責任・自己判断で行ってください。指示命令系統は一切ありません。自分ができることを精いっぱいやること、看護師として恥じない行動をすること。」このことだけを伝えました。

最近、看護に携わる人たちから「看護師の士気が下がった」と聞きます。しかし私は、被災地支援を通して決してそんなことはないと確信しました。看護師たちは、あまりにもマニュアルに縛られて自分の考えで行動するということが出来なくなっていただけなのであって、マニュアルも指示命令系統もない被災地では、実に見事に働いてくれました。それは被災地の体育館にいる被災者の方、医師の言葉からも明らかでした。マニュアルがあるとそれに従わなくてはなりません。自分をそこに無理にでもはめ込もうとするのです。

派遣した医療従事者のうち、98%が病院勤務の経験しかない人たちでした。でも、その人たちが被災地の現場で、「生活の視点で人を見る」ということを学んできてくれました。こういう経験をした看護師たちの中から実際に訪問看護に携わる人も出てきており、本当に嬉しく思っています。

 

―出産・育児で看護師の仕事の現場から離れている方が、まだまだたくさんいらっしゃいますが、やはり復帰に不安も感じている人も多いようです。

看護師という職業は、人に安心感を与えます。責任の重さはありますが、それを必要以上に負担に感じることはありません。どんな仕事にも責任はありますから。

それでも不安だという方のために、キャンナスでは併設の有限会社ナースケアでヘルパーから入っていただくことも可能です。一緒に勉強して、看護師として現場に戻っていく。最初の一歩を躊躇う方は多いですが、いざやってみると、ほとんどが「なんだ、こんなことか」と自信を取り戻します。これは15年間やってきたので保障します。

今、ここでトップを務める者は17年のブランクの後、50歳になる手前でこの世界に戻ってきました。今が一番楽しいと言っています。

まずはやってみる。全国65カ所のキャンナスではいつでも仲間を迎え入れています。地域に1カ所あるだけで地域の人たちが安心する「駐在型訪問看護ステーション」をこれからも目指していきます。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
【プロフィール】
菅原由美(すがわら・ゆみ)/全国訪問ボランティアナースの会 キャンナス代表

1955年神奈川県生まれ、1976年東海大学医療技術短大看護学科を卒業。東海大学病院ICUに1年間勤務。その後、企業や保健・非常勤勤務の傍ら3人の子育て。96年ボランティアナースの会「キャンナス」を設立。98年有限会社「ナースケア」設立。2009年「ナースオブザイヤー賞」、「インディペンデント賞」受賞。

●CANNUS 本部(湘南)
ホームページで活動内容など、詳しい情報をご紹介しています。是非ご覧ください。
http://www.nurse.gr.jp/

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

●記事の内容は取材当時の内容であり、現状は異なる可能性がございますので予めご了承ください。

Return Top