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看護師

サイト閉鎖のお知らせ

諸般の事情により、2021年5月末日をもちまして「チャンスクリエーター」を閉鎖させていただきます。
これまでのご愛顧に対しまして、スタッフ一同、深く感謝するとともに心より御礼申しあげます。

長らくのご愛顧誠にありがとうございました。

病気のことを「伝える」   絵本を通して家族全体をサポートするープルスアルハ/細尾ちあきさん

病気のことを「伝える」   絵本を通して家族全体をサポートするープルスアルハ/細尾ちあきさん
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プルスアルハという心理教育ツールの制作・普及ユニットがある。精神科の看護師と医師が、精神疾患の親を持つ子供や家族のサポートを目的に立ち上げた。これまでにうつ病、統合失調症に関する絵本が出版されており、アルコール依存症編も近々出版予定だ。精神疾患は近年注目されてきており、うつ病で受診する人は5人に一人にも上るという。しかし、これまで病気や病気を患う患者の治療に関する情報は数多く提供されてきたものの、患者の家族、特に子供へのケアには差し伸べられる手がなかった。まずは「周囲の人に正しく病気のことを理解してもらうこと」を目的に、「絵本」という手段からアプローチを始めた。今回は、プルスアルハで「お話と絵」を担当する看護師、細尾ちあきさんにお話を伺った。

 

プルスアルハ/お話と絵、制作 細尾ちあきさん

プルスアルハ/お話と絵、制作 細尾ちあきさん

精神科病棟では気づかなかった、患者さんの背景にある「家族」の存在。

細尾さんはずっと精神科で勤務されてきたんですね。臨床の現場を離れ、「心理教育絵本の制作」という世界に飛び込んだのには、どんな理由があったのですか?

最初は精神科の急性期病棟に3年半勤務しました。それこそ500床もある大きな病院でしたので、当然忙しいですし目の前の患者さんに対し精一杯向き合ってきました。もちろん、自分でもよくやったなと思うくらい勉強もしましたが、その一方で患者さんの周りを見る余裕は全くありませんでした。考えてみれば当たり前のことですが、患者さんにも家族はいるし、子どもがいる人もいます。でも当時はそこに思い至る余裕がなく、そのことに気付いたのは、後に地域の診療所に勤めた時です。親の病気のことが心配で子供たちが付いてくるんですね。中にはお母さんの薬の管理をしている小学生もいました。子供は子供なりの工夫をこらしているのです。地域の診療所だからみんな近所の人たちなんです。そういう子供たちと接する中で、病気の親を持つ子供への適切なサポートが十分ではないことを知ります。

昔は精神疾患の患者は病気に入院させるのが普通でしたが、今はできるだけ地域の中でサポートしていきましょう、という流れになってきています。地域に戻ればそこにパートナーや子供がいます。でも大人も、病気のことを子供にどう伝えたら良いのか、そもそも伝えて良いのかわからないのです。

子供はまだ知識が浅いですから、良くわからないものや目に見えないものに対して大きな不安を抱きます。また、これは発達段階としては正常なことなのですが、何でも自分と結び付けて考えてしまいます。自分の親がどういう病気なのか知らない、そのことが自分にだけ教えてくれないんじゃないかという不信感にもつながります。さらには「親が病気なのは自分のせいなのではないか。」「病気のことは誰にも言ってはいけない。」と思考が発展してしまう傾向があるのです。そこで、まずは大人が病気に関する正しい知識を身に付けよう、そして子供に病気のことをきちんと伝えようという活動をしたいと考えていました。「さいたま市こころの健康センター」の相談窓口の仕事をしていた時に、家族の問題を抱える子供をサポートするプログラムを始めたのですが、その時に作った『ボクの冒険のはじまり』という紙芝居がきっかけです。この紙芝居は後に絵本にもなりました。

絵本を作る以外に、現在はどのような活動をされていますか?

現在は臨床の現場から完全に離れましたので、学校や相談機関などでの講演活動をしています。統合失調症の患者さんは、およそ100人に1人と言われます。精神疾患はとても身近な病気で、例えば小学校に通う生徒の親が精神疾患を抱えている可能性も非常に高いのです。学校の先生がこの病気のことを知っているだけで、子供への適切なサポートが行われるかもしれない。地域の中で関わるというのはそういうことだと考えています。最近では、「知り合いが病気になったので理解したい。」ということで絵本を購入される方も増えています。

「病気を伝えるという選択肢もある。」ことを伝えたい。

主に大人に向けて情報発信しているということでしょうか?

絵本というと、子供向けの児童書をイメージされるかもしれませんが、私たちが作っている絵本は前半は私が描く絵本、後半は精神科医の北野による病気の解説になっています。書店でも絵本コーナーではなく医学書のコーナーに置いてあります。小学校高学年になれば自分で読む子もいるでしょうし、大人が読んでどう子供と接するか。その一助になればと思っています。これまでこういう精神疾患は子供には伝えないというということが多かったように思います。しかし、隠すことでかえって子供は不信感を抱く。自分が悪いと考える。だから、大人に「病気を伝えるという選択肢もあるんですよ。」ということを伝えたいという想いが根底にあります。また、使える本にしたかったので、巻末には「困ったときカード」という付録を付けています。

出版社には自分で企画を持ち込みました。これまでにない内容だったので非常に興味を持ってくれて、専門用語に偏りがちな言葉をわかりやすい平易な言葉に置き換えてくれたり、絵本だからといって子供っぽい装丁にしたくなかった私の意見も取り入れてくれたりとても良いものに仕上がりました。

 

家族のこころの病気を子どもに伝える絵本

家族のこころの病気を子どもに伝える絵本

10年後には当たり前の取り組みに。

現在は関東圏を中心に活動されているようですが、今後は日本全国に普及していくと良いですね。

そうですね。この絵本という共通のツールが広がることで、少しでも多くの人に、病気のことを正しく知ってほしいと思います。今はまだ馴染みのない活動ですが、10年後には「子どもも含めた家族のサポートも当たり前」になっていることが目標です。

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細尾ちあき(ほそお・ちあき)
プルスアルハ/お話と絵、制作、看護師。1974年兵庫県生まれ。京都中央看護専門学校卒業。稲門会岩倉病院、おくい診療所、さいたま市こころの健康センターを経て、2012年よりプルスアルハで活動。

プルスアルハ
絵本、リーフレット等の心理教育ツールの企画、制作、普及活動を行う。

http://pulusualuha.p2.bindsite.jp/
https://www.facebook.com/pulusualuha2
twitter @pulusualuha

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●記事の内容は取材当時の内容であり、現状は異なる可能性がございますので予めご了承ください。

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