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看護師

サイト閉鎖のお知らせ

諸般の事情により、2021年5月末日をもちまして「チャンスクリエーター」を閉鎖させていただきます。
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患者に寄り添う心を忘れずに。-日本医療コーディネーター協会/代表理事・川上憂子さん、最高顧問・嵯峨崎泰子さん

患者に寄り添う心を忘れずに。-日本医療コーディネーター協会/代表理事・川上憂子さん、最高顧問・嵯峨崎泰子さん
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医療コーディネーターという存在を知っているだろうか。簡単にいうと、病院(医師)と患者の調整役を担う存在だ。セカンドオピニオン、インフォームド・コンセントという言葉が使われるようになって久しいが、患者自らが積極的にこれらを行うケースはまだまだ多くはない。「患者にとって最善のこと、患者が望むことは何か」という本来の医療の姿が失われてきていると述べるのは、日本医療コーディネーター協会の代表理事・川上憂子さんと、協会の立ち上げ人で現在は最高顧問を務める嵯峨崎泰子さんだ。今回はお二人に医療コーディネーターという仕事を通して見えてくる理想の医療について、お話を伺った。

 

嵯峨崎泰子さん(左)と川上憂子さん(右)

嵯峨崎泰子さん(左)と川上憂子さん(右)

医療コーディネーターは、看護師の仕事。

―医療コーディネーターの存在はまだ知らない人も多いかと思います。まずはどんなことをする仕事なのか教えて下さい。

嵯峨崎さん(以下、敬称略):医療コーディネーターの仕事は本来の看護師の仕事内容そのものです。看護師の仕事内容とは、『ナイチンゲール誓詞』の「われは心より医師を助け、わが手に託されたる人々の幸せのために身を捧げん」という最後の一文に集約されると思っています。医師は診断と治療の役割を担い、看護師の役割はそれ以外のすべての隙間を埋めることです。それがいつの間にか明確に分業化されてしまい、患者さんとの距離が遠くなってしまった。患者さんが置いてきぼりになっているのが現状です。そこで、医療コーディネーターが患者さんの身体的・精神的サポートの部分から関わっています。実は、このことに気付いたのは自分が病気になった時なのです。「患者と言う立場は、こんなに物を言えなくなる存在なんだ」ということに、より被害的な立場になって初めて気が付いたのです。何か聞いても「主治医に聞いてください」と看護師に自分の立場を主張されることで、患者さんに寄り添えていないということが分かったのです。

その後、「父が病気だが、手術を受けたくないと言っている」と友人から相談を受けたことが医療コーディネーターの始まりです。友人の父に「どうして手術を受けないのか?」を聞くと、「そんなこと初めて聞かれた」と言われました。その後、医師にも「どうして手術が必要なのか?」と聞くと、医師も初めてその理由を説明します。そこでやっと、両者の話し合いの場が設けられるのです。病院の現場では一緒に治療をするという体制が整えられていないのです。本来、医師と患者との間の溝を埋めるのは看護師の役割ですが、病院の現場ではそれができていないため、第三者的な立場で医師と患者との調整役を担うのが医療コーディネーターです。

―川上さんが医療コーディネーターになったきっかけは何だったのでしょうか?

川上さん(以下、敬称略):当時、私は病院で看護師をしていました。大きな病院でしたので癌の患者さんとのコミュニケーションに問題が生じていました。たとえば、医師の話がわからないと言ってクレームが来たり、癌と告知されて不安になっても、その患者さんをフォローする体制が整えられていないといったことなどです。相談窓口もありましたが、それでも解決しないということがありました。そこで院長からその状況を改善するようにとの指示があり、解決法がないか調べていくうちに日本医療コーディネーター協会を知ることになります。その後、協会で養成講座を受講したことが始まりでした。講座が修了してからは病院に戻って早速、患者会を立ち上げました。医療現場はどうしても保守的ですから、新しいことを始めようとすると組織内に拒絶反応が生じます。医療コーディネーターという、よくわからないものを導入しても反対されるだけですが、患者さんのための患者会であれば始めやすかったという理由もあります。ただ、これまでの患者会というのは医師から話を聞くだけの勉強会というのが通常でしたが、ここでは「心が元気になる患者会をやりたい」という患者さんの声もあり、話したり唄ったりという活動をしていました。私の仕事も、部屋を押さえてその場にいるだけです。患者さんから「薬剤師さんの話が聞きたい」と言われれば勉強会を開くこともありましたが、患者さんから要望として出てこない勉強会を実施することは無意味だと思っています。

医療コーディネーターの勉強をしてから、何か変化はありましたか?

川上:自分が一番変わりました。以前は、患者さんが困っていることに対して完璧な答えを出せることが、看護師としてエキスパートだと思っていました。だから、治療に対して不安になりモチベーションが低下している患者さんには何とかしてやる気を出してあげること。それが「仕事ができる看護師」だと思っていたのです。でも今は、本当の答えは患者さんの中にある。「こうあらねばならない」「こうあるべきだ」と思わなくなりました。当時の患者会に関しても、「勉強会をやらない患者会なんて意味があるの?患者さんを教育できるの?」と他の看護師に言われたこともあります。以前の私であれば、そんなこと言われたら「たしかにその通りだ。勉強会をやらないと。」と思っていたはずですが、その時は「教育目的ではありませんから」と堂々と言えるようになっていたのです。これはとても大きな変化でした。

嵯峨崎:私が始めた頃は癌治療の草創期と言われていて、患者さんを「何とかして生かしたい、奇跡を起こしたい」という気持ちがありました。でも、本当は患者さん本人の中でどうしたいかという答えは出ていて、それを言語化する・しないに関わらず表現させることが私の役割だと気づきました。患者さんに教えてもらったように思います。だから、今は「本当はどうしたい?何が苦しい?」という言葉が自然に出てくるようになりました。患者さんも自然に答えてくれますし、時にはこちらが想定もしなかった答えが返ってくることもありますが、これが本来の医療の姿だと思います。

 

現場の「チーム医療」が抱える問題解決の糸口に。

―講座を学びに来る看護師にはどのような動機があるのでしょうか?

川上:一番多いのは今のままで良いのか?という「疑問」を抱えてくる看護師です。チーム医療でありながら、そのチームの中に患者はいない。これまでの自分のやり方に疑問を感じているという方です。その他には、自分や家族が病気になったことをきっかけにこれまでとは異なる立場を経験した方ですね。他の患者さんにこういう想いをさせたくないと来られる方もいます。

嵯峨崎:看護師で管理職の方が学ぶと、現場に戻った時にすごくいい変化をもたらしているようです。「なんとか変えたい」という想いが組織を動かすのですね。また、医師と看護師、患者のコミュニケーションが円滑に進むと医師は本来の仕事である診療・治療に専念できます。ですので、医療コーディネーターが果たす役割に関して、医師の方からは大きな理解が得られています。最近は病院や福祉施設が費用を出して、現場の方を講座に派遣するケースも増えてきています。

―患者さんからは、どのようなご相談を受けるのでしょうか?

川上:終末期の方が、自宅に戻りたいが戻れる環境ではないという場合や、癌の治療法の選択などがあります。最近はインフォームド・チョイスと言って、医師が提示した複数の治療法から選ぶというものがあります。それにしたって知識がなければ判断ができないですし、ましてや気持ちの準備ができていない状況であることもあります。医療コーディネーターはそういう状況に際して、どれが良いか・悪いかではなく、患者さんが望むものに関して情報収集し決定のサポートをしていきます。「この治療をやったらこういう未来がある」「この治療をやらなかったらこういう未来がある」ということを伝えます。病院で働いている時よりも、圧倒的に提示できる選択肢の幅は広いです。中には「どのように死ぬか。その後どうするか。」を既に決めている方もいらっしゃって、私たちはお手伝いだけというケースもあります。

 

センスがある看護師とは、無意識に患者に寄り添える人。

疑問を抱えていたり、理想と現実のギャップに悩む看護師が多いようです。

嵯峨崎:本当は、近くにロールモデルになるような先輩看護師がいると良いのでしょうが、現場の忙しさに忙殺されている状況だとそういう人を見つけるのも難しいと思います。現に私も、生き生きと職業人として、この仕事をやっていて心底良かったというオーラを出している先輩には残念ながら巡り会えませんでした。一人だけ、「この人はいい看護師だな」と思った人がいます。子供を妊娠中に入院した際、とにかく不安で「お腹の子は今どうしているんだろうね?」と担当の看護師にぽろっと話したところ、まだ新卒2年目くらいの看護師でしたが、自分で図書館に行って胎児の写真を掲載した本を借りてきたのです。そして、「今、これくらいですかね。」「もう1週頑張れば、これくらい大きくなりますよ。」と話してくれました。彼女は注射も清拭も看護技術はお世辞にも上手とは言えませんでしたが、すごく良い感性を持っていたと思います。患者に寄り添うということを無意識に実行できていた。看護師としての天性のセンスを持っていたと思います。彼女のような看護師がロールモデルとなることで、人が育っていくのかなと思っています。

川上:現場はとにかく忙しいです。怒涛の業務の中で神経をすり減らし、自分で何を求めているのかわからなくなると思います。そういう時は、思い切って別の角度から見てみるといいと思います。すり減っていたものは必ず取り戻せます。看護師がフルの状態でなければ人を助けることなどできません。外に答えを求め続けても、自分が支えられているということを実感できなければ、患者のサポートなどできないと思っています。

 

自分のためであること。

―最後に、医療に携わる方へのメッセージをお願いします。

嵯峨崎:患者は、医師や看護師にわからないことを尋ねてみて、100%無条件でその質問を受け入れてくれないと「もういいや」と次に尋ねることをしなくなります。病気の状態であればなおさら、「今聞いたら悪いかな」という考えが強くなる傾向があります。看護師はみんなとても真面目に仕事をしていますから、患者に聞かれたことは解決しなくちゃ、と考えてしまいますが、その場で解決できなくてもいいのです。寄り添い、「何でも聞いて。難しいことは一緒に考えよう」と言ってあげることで、患者はとても楽になります。だから、完璧を目指すのではなく寄り添い一つずつ解決していくということを大事にしてほしいと思います。もっと自分が楽になっていいと思います。

川上:看護の仕事は滅私奉公で成り立つ仕事ではありません。「患者さんが笑うことで私が笑う。私が嬉しいと患者さんも嬉しい。」そう思えることがすごく大切だと思います。つまり「自利利他」の境地です。自分と患者さん双方がwin-winでなければいけないのです。邪魔をしているのは、看護師の独りよがりな押し付けや、「こうあるべき」という固定観念の呪縛でしょう。ひとつ次元を上昇させたものの見方に気付いたとき、「自利利他」が実現するのではないかと思います。答えは自分の中に必ずあります。自分を見つめ直すことが、ゆくゆくは患者さんのためになるということを忘れないでほしいと思います。

 

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川上憂子
一般社団法人日本医療コーディネーター協会 代表理事
専修大学法学部法律学科卒業。その後、国立東京病院付属看護学校で学び看護師、看護教員の免許を取得。国際医療福祉大学大学院医療福祉学研究科保健医療学専攻看護管理学修士。医療福祉学研究科保健医療学専攻医療福祉政策学博士課程終了。現在は、高野山大学大学院密教科に在籍し「スピリチュアルケア 死を捉える教育」をテーマに研究をすすめている。また、自ら僧としても修行中である。沙門玉置妙憂。

嵯峨崎泰子
一般社団法人日本医療コーディネーター協会 最高顧問

一般社団法人日本医療コーディネーター協会
http://www.jpmca.net/

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●記事の内容は取材当時の内容であり、現状は異なる可能性がございますので予めご了承ください。

COMMENTS & TRACKBACKS

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  1. By クリスタル

    初めまして。
    クリスタルこと、とどろき由子と申します。
    おっしゃるとおり、思ったような看護ができない看護師が多く、悩みも深くなっています。
    喜びの多いお仕事をしたいと願っている人たちがたくさんあり、現場で何とかならないかと模索しています。
    私はコーチングを学び、この技術を生かし、良い質問をすることで患者さんやスタッフの間の関係づくりを推し進めています。
    このお仕事自体も本当に素晴らしい。
    そしてこのやり方、技術が現場に浸透していくことを願っています。
    長文失礼しました。
    ありがとうございました。

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