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看護師

サイト閉鎖のお知らせ

諸般の事情により、2021年5月末日をもちまして「チャンスクリエーター」を閉鎖させていただきます。
これまでのご愛顧に対しまして、スタッフ一同、深く感謝するとともに心より御礼申しあげます。

長らくのご愛顧誠にありがとうございました。

終末期をナースと暮らそう。-ナースさくまの家 代表 佐久間洋子さん

終末期をナースと暮らそう。-ナースさくまの家 代表 佐久間洋子さん
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「ナースと暮らすシェアハウス」。そんなコンセプトの家が三鷹市にある。

運営する看護師の佐久間洋子さんは、病院、在宅、施設と様々な状態の患者を診てきたベテランだ。豊富な経験から行き着いたのは、「終末期を在宅で過ごすのは素晴らしい」ということ。とはいえ、病院でもない、施設でもないかたちを作り上げるにはたくさんの紆余曲折を経てきた。佐久間さんが「シェアハウス」に拘った理由に迫る。

ナースさくまの家 代表/佐久間洋子さん

ナースさくまの家 代表/佐久間洋子さん

過剰なサービスは共同生活には必要ない。

―「ナースさくまの家」とはどのような家なのでしょうか?

「終末期を家で」というコンセプトはありますが、終末期の方に限らず、病院を出たいけど家族と暮らすことが難しい方や、認知症の方も入居されています。平成24年12月に開所して以来、この家で看取った方はまだ一人しかいません。

病院でも施設でもありませんので、自分のことを自分でできる場合はやってもらうことが基本方針です。しかし、そうは言っても高齢者が自分でできることは限られますので、自分の部屋の掃除や、元気な方には庭で育てている野菜の世話などをお願いしています。庭であれば煙草もOK。夏にはバーベキューもしますし、私が夜、晩酌をしている時に起きてきた方には「一緒に飲む?」と声を掛けて一緒にビールを飲むこともあります。食事や洗濯は平日にシルバー人材の方にお願いしていますし、薬や体調の管理は私が行っています。入居者の方の状況は様々ですから、昼間はデイサービスに行く方もいますし、要介護5の方には朝・晩でヘルパーの方に来てもらっています。

施設のように過剰に丁寧なサービスは提供していません。「やってあげる」という気持ちで接すると、ご本人ができることはどんどん減っていきます。ここで大切にすることは共同生活を営むうえで「協力する」ということ。それは、私が協力するだけでなく、入居者の方にも求めています。「食事をしたくない」という人には叱ることもありますし、面会に来た家族にそっけない態度をとる方には「来てくれたんだから、『ありがとう』くらいは言った方がいい」と伝えることもあります。自分のわがままが通らないことは共同生活を営むうえで基本のこと。お互いを思いやってこそ成り立つ部分もあるのです。

 

庭で育てている野菜。

庭で育てている野菜。

 

―立ち上げから苦労されたことも多かったのではないでしょうか?

一番大変だったのは開設する前、物件がなかなか見つからなかったことです。「日本には空家はたくさんあるんだからすぐに見つかる」くらいの気持ちでいたのですが、「終末期を家で」という私の想いが、難航する原因でした。「終末期」と聞くと、「救急車や霊柩車がひっきりなしに来る家」と思われるようで、気に入った物件があっても大家さんから断られる。私としては、人に嫌がられるようなことをしているという意識がまったくなかったので驚いたというのが正直なところです。

現在の家は2階建てであることを懸念したのですが、それは階段昇降機を取り付けることで問題ないと判断しました。入居者の方には在宅サービスを利用してもらうことを予定していたので広い駐車場も魅力的でした。

 

階段昇降機。要介護5の方でも、これで上り下りに支障はない。

階段昇降機。要介護5の方でも、上り下りに支障はない。

 

看護師として、そして家族として。在宅での看取りのかたち。

佐久間さんがこのようなシェアハウスをつくろうと思ったきっかけは何だったのでしょうか?

 

看護師になってから、病院、在宅、施設とほぼすべての過程に関わり仕事をしてきました。同時に、コンクリートの建物の中で役職を意識しながら働き続けることに疲労し始めていたことも事実です。その状況から「独立したい」と考えたものの「何をするか」は決めておらず、ある人に相談したところ「色々な過程の患者を看てきていることが強みなんじゃない?」と言われ、シェアハウスを運営してみようと考えました。

私が初めて在宅での看取りに関わったのは老老介護の夫婦で、86歳の食道がんの男性を、83歳の奥様が看病していました。吸引器を使っての吸引も奥様がしていて、離れて暮らす息子さんもよく来ていました。病院での最期と違って、在宅の最期には本当に色々な形があります。その人の個性や家族の関わり方が、最期に表れてくるんです。病院での最期に違和感を持っていた私が、「在宅での看取り」に拘るようになったきっかけにもなりました。

私自身の家族との経験も、原点にあります。私は実父を自宅で看取りました。自分が看護師としてではなく家族として関わってみると、病院での付き添いよりも在宅の方がよほど楽だということに気づきます。母もいつものように日常生活を送っていました。父の死後、親戚から父が生前に「病院では死にたくない」と言っていたことを知らされます。無理やり退院を決めた時は「勝手に決めるなんて!」と怒っていたのにそんなことを言っていたのか、と驚きました。今となっては本心を聞けませんが、私は父を自宅で看取ることができて良かったと思っています。

一方、姉の最期は病院でした。すい臓がんの末期でICUに入院している姉の姿を見た時に感じたのは「私が新卒で看護師になったときから、がんの末期の医療は何も変わっていないのではないか」ということ。呼吸器と点滴、麻薬。意識も戻らないまま亡くなったことは今でも悔やまれます。

「ナースさくまの家」には、父のように「病院では死にたくない」とやって来る人もいます。ここでの私の仕事は看護師というよりも主婦に近いものがありますが、ここで暮らすことを選んだ人には寂しい思いはしてほしくない。これは強く願っていることです。

 

 

「誰かの役に立ちたい」という気持ちが張り合いを生む。

―「ナースさくまの家」には入居者以外の方も出入りされているのでしょうか?

お手伝いに来てくれるシルバー人材の他、近所の一人暮らしの高齢者も来ます。一人で生活ができても寂しさはあります。地域の公民館に行くにしても体が辛いこともあるでしょう。でも、近所の「さくまの家」なら歩いて来られるという方にはどんどん来てほしいと思っています。今、毎週木曜日はラーメン食堂を開いています。ある日、お隣のおばあちゃんが「ラーメンを食べたい」と言うので、「お昼食べに来る?」と話したことがきっかけとなりました。無料だと気を遣うので1食300円です。ラーメンを食べて終わり、ではなく掃除を手伝ってくれたり、入居者の洗濯物を取り込んでくれることもあります。そうやって、「誰かの役に立つ」機会があるだけで、気持ちに張り合いが生まれるようなのです。私の他、シルバー人材の方、入居者の方、近所のお年寄りなど、おばちゃんたちがガヤガヤと働いている空間が純粋に「いいな」と思う気持ちもあります。

 

―今後、「ナースさくまの家」はどんな存在になっていきたいですか?

まずは一緒に運営してくれる仲間を増やしたいと思っています。看護師は病院での夜勤には慣れていますが、自宅での夜勤を頼める人は多くありません。夜間は私一人ですが、この先もずっと一人でやっていくには限界があります。また、今は少しずつですが、全国から見学に来る看護師が増えてきていて、次に続く看護師が全国にこのような場所を作ってほしいという期待の気持ちもあります。そのためには「続きたいと思う人が出てくるような運営」をしていく必要があります。

私が新卒で看護師として働いていた時、同期の医師が言っていたことを時々思い出すことがあります。

「患者さんが亡くなる時、みんな患者さん本人じゃなくてモニターを見ているのが悲しい」。

「ナースさくまの家」で看取った方は、家族も一緒に泊まり込み、皆が手を握りながら静かに息を引き取りました。最期の期間はそれほど長くはありません。残された期間を私たちと「もうひとつの家」で過ごしたいと思ってくれる方を、今後も温かく受け入れていきたいと思っています。

 

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【プロフィール】

佐久間洋子(さくま・ようこ)/ナースさくまの家 家長看護師

昭和58年3月  東京警察病院看護専門学校 卒業
昭和58年4月  東京警察病院
昭和61年10月  心臓血管研究所付属病院
平成元年10月  榊原記念病院
平成6年5月   杏林大学医学部付属病院
平成12年9月  織田福祉専門学校
平成14年7月  医療法人社団永寿会 訪問看護ステーション所長、老人保健施設三鷹中央リハケアセンター看護介護科科長
平成24年12月  ナースさくまの家 開設

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●記事の内容は取材当時の内容であり、現状は異なる可能性がございますので予めご了承ください。

COMMENTS & TRACKBACKS

  • Comments ( 5 )
  • Trackbacks ( 0 )
  1. By 二宮純子(にのみや すみこ)

    ナースさくまの家、大変眼から鱗です。
    特養で看とりを経験して病院では味わうことのない感覚に家ならどうだろうと思ってきました。
    送り出す自然な気持ちを最近体験しました。家族のいない90代の男性でした。
    施設では限りのある生活、もっと自然の空気を吸って見たかったかも。
    ナースさくまの家を訪ねる機会を楽しみにしたいと思います。

    二宮純子

  2. By 林 弥生

    こんばんは。とても興味深く記事を読ませていただきました。現在私は夫の実家のある地域に暮らしているのですが、超高齢化は避けられず・・・看護師歴は大したことはないですが、思いだけは人一倍!と、思っています。人脈確保から・・・何もかも一からなんでけれども、とても勇気をいただいた記事でした。ありがとうございます!

  3. By 沢田啓子

    素晴らしい!!今私は52歳!!急性期病院で勤務してます!!看護の集大成、人生の集大成で岐路に立っています!!今後のことで悩んでいます!!さくまさんのような働きを知り、一歩踏み出すのに確固たる動機がほしいと思って悩んでいます

  4. By 中田英子

    初めまして。

    FBで存在を知り
    読ませていただきました。
    素晴らしいですね。
    一言では、言えない事でしょうが。

    私は今年50歳
    母は71歳

    いろいろ考える時期です。
    私は、何の資格もありませんが
    お役にたてる事があれば
    嬉しいです。
    季節がら、体力維持大変でしょうが
    どうぞ、ご自愛ください。

    中田英子

  5. By 下田 隆史

    初めまして。

    暑いですので、

    ご自愛の上ご活躍ください。

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